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概要

現地における実証試験の実施

 

労働、資源、エネルギー、資本、土地や水なども含む環境資源を投入することにより、ヒトは食料を生産し、モノを作り、サービスを生み、経済を発展させてきた。

ダイナミックなグローバル経済を支える、大量の物流、ヒトの長距離移動、地球の裏側まで瞬時に駆け巡る情報伝達、これらを可能にしているのが大量のエネルギー消費である。しかも現在このエネルギーの大半を賄っているのは化石燃料、つまり過去の太陽エネルギーの缶詰だ。言うまでもなく、それは枯渇性資源であり温暖化ガスの排出源でもあるため、持続可能なエネルギー源ではない。持続可能なエネルギーシステムとは、すべてのエネルギー需要を太陽、風力、水力、潮汐、海流、持続可能なバイオマスなどの太陽と重力起源のエネルギーと、技術の進展により実用化できればであるが、核融合など資源制約のない核エネルギーで賄う、ということである。

地熱を除く再生可能エネルギーは、化石燃料に比べ普遍的に存在するが非常に希薄なエネルギーである。最も面積効率の高い太陽光発電でも、日本においては敷地面積一平方キロメートル当たり10MWの平均出力が得られればよい方だ。日本の一次エネルギー消費は約600GWなので、これを単純に全て太陽光でまかなおうとすると国土のおよそ1/6に相当する6万km2の土地が必要になる。日本の国土はほとんどが植生で覆われているため、建物など人工物の上に太陽電池をのせるのならともかく、植生をはぎ取って太陽光パネルを敷き詰めるというのは環境の観点からいえば本末転倒である。

しかしながら世界を見渡せば、日射量が豊富で全く植生のない不毛な地域はいくらでもある。特に中東産油国は、産油国であるが故に不毛な大地に人が住み経済活動も活発な、特殊な地域である。しかも石油がきわめて安直に手に入るが故に、国内のエネルギー源として大量の石油を消費し、内外価格差から膨大な機会損失を生じていることが多い。また、不安定な原油価格に翻弄される石油産業中心の経済構造からの脱却とともに、人口増大期特有の人口ボーナスを有効活用するための新たな雇用の創出が模索されている。このため、産業としての太陽エネルギーの大規模導入に対する期待は大きい。

太陽エネルギー、特に大規模太陽光発電の導入に際しては、強烈すぎる紫外線や高温による封止材の劣化や砂嵐、雨が降らないが故の砂塵の堆積など、過酷な砂漠環境における設備の耐久性や運転管理上のノウハウなど、その事業性を評価する上で早急に検証すべき課題が山積しており、現地におけるさらなる実証試験が必要である。

このため、本総括寄付講座の第2期においては、まず現地における実証試験の実施を最優先課題としている。

 

水電解水素製造装置の耐久性の向上と製造コスト削減に向けた研究開発

 

サウジアラビアにおいては、おおよそ日量1,200万バレル生産される原油のうち約390万バレルが国内で消費されている。そのうち発電用に使われているのは約35%であり、国内消費の約4割はガソリンを含む輸送用燃料として消費されている。そして海水の淡水化は多くの場合、発電の廃熱を使って行われている。よって、淡水化設備を併設する石油火力発電を太陽エネルギーで代替する場合には,海水淡水化もフラッシュから逆浸透膜方式に変えた上で、太陽光発電によって得られた電気で稼働させる必要がある。

輸送用燃料の代替は発電用の石油を太陽エネルギーで代替した上でBEV(電気自動車)を普及させるのが最も手っ取り早いが、電池の性能如何ではFCV(燃料電池車)との競合となることも考えられる。FCVの導入に際しては再生可能エネルギー起源の水素を製造する必要があるが、これは太陽光発電と電気分解との組み合わせで可能となる。

このため、本総括寄付講座では引き続き水電解水素製造装置の耐久性の向上と製造コスト削減に向けた研究開発を継続している。

太陽エネルギーと水から水素が製造されると、さらに二酸化炭素と反応させメタンなどの炭化水素を合成することも考えられる。炭化水素は既存のインフラでどこにでも輸出することが可能であるため、既存のインフラを継承しつつ持続可能なグローバルエネルギーシステムを構築できる可能性が見えてくる。